恋時雨~恋、ときどき、涙~

「真央のガトーショコラ、ひと口だけちょうだい」


微笑みながら頷くと、静奈はにやりと不適な笑みを浮かべて、ガトーショコラを大雑把に大きく切り取り、大きな口へ放り込んだ。


〈ひどい!〉


わたしはたち膝になり、静奈に飛びかかった。


〈うそつき! ひと口だけって言った〉


静奈はとてつもなく可笑しそうに笑って、ごめんごめんと言った。


そして、静奈が食べていたフルーツタルトをわたしにすすめてきた。


「じゃあ、真央も、これ半分食べていいよ」


〈本当?〉


「いいよ。これでおあいこ。ね」


スプーンでタルトを切り分けていると、突然、部屋のランプがくるくる回って点滅した。


とっさに顔を上げたわたしは、息を呑みながらスプーンを床に落とした。


ウソ。


開いた口が塞がらなかった。


開いたドア先に立っていたのは、他の誰でもない健ちゃんだったのだから。


突然の事に、静奈もびっくりしてしまったようだ。


健ちゃんが静奈に向かって、右手を上げた。


「よう。静奈ちゃん。久しぶりだんけな」


目を丸くした静奈が、小さく笑った。


そして、わたしの肩を小突いた。


「何よ。健太さんが来るなら、教えてくれれば良かったのに」


わたしは首を振った。


健ちゃんと会う予定なんてなかったのだから。