恋時雨~恋、ときどき、涙~

健ちゃんと付き合うことになった日から、いつかはこんな日が来てしまうことを。


どうして、わたしは、大好きな人の声すら聴くことができないのだろう。


健ちゃんの声を、聴いてみたい。


どんな声をしているのか、この耳で聴いてみたい。


大粒のわた雪が、ぼた餅のように降り注いでいた。


真っ白な夜空に、乳白色の月が鮮明に浮かんでいる。


きれいな、冬月夜だった。











家に帰ると、リビングでお父さんが1人、コンビニのお弁当をつついていた。


わたしは、キッチンでほうじ茶を入れて、お父さんに差し出した。


〈飲み物くらい、自分でいれて。のど、つまるでしょ〉


「ありがとう、真央」


〈どうして、お弁当なの? お母さんは?〉


わたしが訊くと、お父さんが肩をすくめた。


「お母さん、体調が悪いって。寝たよ」


わたしは、目を大きく見開いた。


びっくりした。


いつも明るくて、元気満々なお母さんが寝込んでしまうなんて。


〈大丈夫なの?〉


身を乗り出して訊くわたしを、お父さんは笑い飛ばしながら立ち上がった。