恋時雨~恋、ときどき、涙~

悲しかった。


ショックだった。


でも、否定できない自分が情けなかった。


はなはだしく、悔しかった。


わたしは、唇を強く噛んだ。


〈わたし、健ちゃんを、信じることができない〉


そんなことを言ったこの両手を、切り落としてしまいたかった。


健ちゃんが、泣きそうな顔をしていた。


もう、終わりだ。


正直、そう思った。


今、このまま話し合ってもらちが明かないと思う。


顔を歪めて肩をすくめている健ちゃんの顔を扇ぐ。


〈健ちゃん。また、今度にしよう。らちが明かない〉


健ちゃんが頷いた。


「そうだな」


〈いつ、時間ある?〉


わたしが訊くと、健ちゃんは都合悪そうに手話をした。


「まだ、しばらく、忙しんけ。ごめん」


〈また?〉


「どうしてもやらなきゃいけないことが、あるんけ」


〈最近、忙しい、そればかり。なにをしてるの?〉


今日だって、仕事は定時で上がったみたいだし、じゃあ、何がそんなに忙しいのだろうか。


ごめん、と健ちゃんが謝った。


「今は……まだ言えねんけ」


わたしの思考回路が故障し始めていた。


〈今は言えない? どうして?〉


わたしは、健ちゃんの腕に掴みかかった。