恋時雨~恋、ときどき、涙~

スペアキー取ってくる、そう手話をして、健ちゃんはキッチンを出ていった。


わたしは、溜め息すら出なかった。


わたしの体中に、真っ黒でどろどろした感情が生まれていた。


スペアキーを持って戻ってきた健ちゃんに駆け寄り、わたしは睨み付けた。


〈嘘つき〉


わたしは乱暴に手話をして、健ちゃんの右手をはたいた。


健ちゃんの右手からスペアキーが落ち、床に転がった。


「なに怒ってるんけ」


健ちゃんがスペアキーを拾う前に、わたしが先に拾った。


スペアキーをリビングのガラステーブルに向かって、思いっきり投げてやった。


いつもはノーコンのくせに、こんな時に限ってうまくヒットするのは何でだろう。


スペアキーはテーブルの角で跳ね返り、フローリングをカエルのように飛び跳ね、止まった。


健ちゃんが溜め息を落とした。


「なんで、そういうことするんけ。せっかく、久しぶりに会えたのに」


それは、こっちの台詞だ。


わたしは、健ちゃんの腕を掴んで、リビングへ向かった。


ガラステーブルの灰皿を寄せて、それを手にして、健ちゃんの顔に突きつけた。


健ちゃんの顔色が、みるみるうちに変化した。


嘘は、ばれるから、嘘なのだ。


わたしは置き手紙を健ちゃんの胸に叩き付けた。