恋時雨~恋、ときどき、涙~

新幹線がホームに滑り込んできた。


冷たい突風にあおられ、フェンスにくくりつけていた便箋が飛ばされてしまった。


静奈が目を大きくして、身を乗り出した。


順也の気持ちが真っ直ぐ伝わるように、わたしも真っ直ぐに両手を動かした。


〈生まれ変わったら、ぼくと、結婚してください〉


新幹線の向こうに消える直前に、静奈は「順也」と言ってしゃがみこんだ。


新幹線が停車した。


新幹線に、雪崩れ込むように人が乗車していく。


健ちゃんが、そっと、わたしを肩から下ろした。


新幹線の窓をくまなく見つめた。


みるみるうちに、満席になってしまった。


わたしは、健ちゃんの手を握った。


健ちゃんの手は氷のように冷たくて、不安になった。


静奈は、新幹線に乗ってしまったのだろうか。


6時5分。


時間ぴったりに、新幹線は加速しながらホームを出て行った。


わたしは愕然として、立ち尽くした。


強い風が、わたしをあおる。


新幹線が出て行ったばかりのホームに、静奈の姿はなかった。


やっぱり、静奈は新幹線に乗ってこの町を出て行ったのだ。


片腕をもがれたような痛みが、心臓を鷲掴みにした。