恋時雨~恋、ときどき、涙~

朝もやのような雪の線路を、減速しながらホームに近付いてくる。


健ちゃんの右手の指が動く。


指文字だ。


「い、そ、げ」


わたしは慌てて便箋に視線を戻した。


残りは、あと数行だった。


でも、その文章を読んで、突然、涙が止まらなくなった。


これを、わたしが伝えてもいいものなのだろうか。


こんな大事なことを、わたしの手話なんかで伝えられるのだろうか。


そうしている間にも、新幹線はホームを目指して迫ってくる。


静奈が心配そうな目で、わたしを見つめていた。


わたしは迷った。


でも、わたしが伝えるしかない。


今、伝えなければ、もう伝えられないかもしれないのだから。


迷っている場合じゃない。


〈生まれ変わったら、今度こそ、幸せにします。ずっと、一緒にいよう〉


静奈が泣いている。


新幹線が、もう、すぐそこまで迫っていた。


〈生まれ変わったら、言えなかったことを言うよ。今度こそ、絶対に、しーを幸せにします。だから〉


その時、わたしの両手に順也が乗り移ったのだと思う。


わたしは、ひどく緊張していた。


両手が震える。


涙が止まらなかった。