恋時雨~恋、ときどき、涙~

静奈が懐かしそうな目で、わたしの両手を見つめていた。


〈あの時、しーの返事を聞いて、ぼくは腰を抜かしそうだった。びっくりした〉


「えっ」と静奈の唇が動いたのが見える。


わたしは、順也の字を手話に訳し続けた。


〈それは、結婚前提という意味ですか? しーに訊かれて、ぼくは何も答えられなかった〉


つめたい空気に、両手がかじかむ。


〈だって、まだ、高校1年生だったんだ。15歳で、結婚だなんて、頭の隅にも無かったから〉


朝の空気は冷たくて、痛いほどだ。


〈そんなぼくに、しーは言ったよね〉


静奈は懐かしそうに笑い、時折、切なげに目を潤ませているように見える。


〈それくらいの覚悟があっての告白ですか? 私を、幸せにする自信があるの?〉


静奈が、恥ずかしそうに頬を赤くした。


〈なんて女を好きになったのかって、自分に呆れたよ。でも、なんていい女に惚れたんだって、思った〉


ぼくは、歩けなくなった事、後悔してない。


しーを守れたんだから、満足してる。


でも、後悔してる。


しーを、手離してしまったこと。


ものすごく、後悔してる。


でも、これで良かったのかもしれないとも、思っています。