恋時雨~恋、ときどき、涙~

そうか。


背の高い健ちゃんの肩に乗れば、フェンスに邪魔されずに手話ができる。


「乗れ」


わたしは迷わなかった。


勝手に手紙を開けて読むなんて、順也には悪いけれど、もう、一秒だって惜しい。


わたしは、健ちゃんの広い肩に両足をかけた。


すごい!


空が近くにある。


実際に登った経験はないけれど、富士山にでも登ったような気分だった。


静奈が目を丸くして、わたしを見ていた。


周りにいた人たちも何事かと、興味深そうにわたしを見ている。


でも、恥ずかしいなんて思っていられない。


わたしは、手話を始めた。


〈手紙、預かってきた。読みます〉


静奈がぽかんとしている。


わたしは、健ちゃんがフェンスにくくりつけてくれた便箋に視線を落とした。


〈しー、へ〉


わたしの指文字と手話を見て、静奈が息を呑んでいるのが分かった。


きれいな顔立ちが、少々、こわばっている。


順也が書いた手紙は、本当に告白から始まっていた。


〈好きです。付き合ってください〉


順也らしいストレートな書き出しに、切なさがこみ上げた。


〈覚えていますか? それが、ぼくの人生初の告白だった〉