恋時雨~恋、ときどき、涙~

手話が分からないクラスメイトたちとは筆談だったし、不便ながらもそれなりにどうにでもなったからだ。


それに、今日、初めて会ったばかりの健ちゃんの事なんて、わたしは全然知らない。


明日になれば、友達じゃなくなっているかもしれない。


わたしは持っていたスマホを指差した。


少し考えて、健ちゃんがぱっと笑顔になった。


「そっか。ラインか。別に、手話じゃなくても話はできるんけな」


わたしは頷いた。


健ちゃんがわたしに背を向けて、海に向かって両手を上げた。


どうやら、何かを叫んだらしい。


急に振り向いて、健ちゃんが言った。


「真央は、普通の女だんけな」


健ちゃんが、両手で耳をふさいだ。


「耳は聴こえないかもしれない。でも、笑うし、怒るし、普通だんけ」