恋時雨~恋、ときどき、涙~

どうやら、駅のホームは賑やからしい。


音楽が鳴ったり、アナウンスがひっきりなしに流れているようだ。


健ちゃんが、息を切らしながら顔を歪めた。


「だめだ。全然、届かねんけ」


わたしは肩をすくめた。


その時、わたしたちの目の前を駅員さんが通りかかった。


健ちゃんが駅員さんを呼び止めて、何かを必死にお願いしている。


しばらくすると、駅員さんが呆れた顔をして、首に下げていたホイッスルを口にあてた。


駅員さんが、ホイッスルに息を吹き込んだ。


それと同時に、健ちゃんも叫ぶ。


「静奈ちゃん! 静奈ちゃん!」


向こうのホームで、静奈が弾かれたように顔を上げて、きょろきょろしている。


こっち!


静奈、気付いて!


祈るように静奈を見つめたわたしは、フェンスを握り締めて強く揺らした。


これくらい、分かる。


たぶん、音が出ている。


静奈の隣にいたキャリアウーマンのような女性が、静奈の肩を叩き、何かを話し掛けた。


静奈が、ゆっくりとこちらに視線を流した。


「真央」


静奈のきれいな唇が、わたしの名前を言った。


わたしと健ちゃんは、目を合わせて笑った。


フェンス越しの向こう側に、微笑む静奈がいた。