恋時雨~恋、ときどき、涙~

「そんなことないよ」


泣き顔に触れようとした順也の手を、静奈が強くはたいた。


「触るなって言ったでしょ」


それでも、順也は優しく微笑んでいた。


「しー」


順也の優しい人差し指が、震える静奈の唇をなぞった。


上唇。


下唇。


順也の唇が動く。


「ごめんね。ぼくのせいだ」


静奈は、目を丸くして固まっていた。


順也の大きな手が、静奈の華奢な両手を優しく包みこんだ。


「しー、痩せたね。ちゃんと、食べてるの?」


静奈の髪の毛。


静奈の痩けた頬。


静奈の華奢な肩。


今にも折れてしまいそうな、静奈の両腕。


ひとつひとつの感触を確かめるように、順也の大きな手が触れていった。


「ぼくのせいだ。つらい思いさせて、ごめん」


そして、もう一度、静奈の唇を親指でなぞってから、順也は手話をした。


「しーが辛い時に、そばにいてあげられなくて、ごめん」


順也の目から、大粒の涙がこぼれた。


わたしの胸が熱くなった。


さすが、順也だと思った。


幼い頃から、常々、思っていたけれど。


今日の順也は、特別そう思えた。


でっかい男だなあ。