恋時雨~恋、ときどき、涙~

「ずっと、一緒にいられる方法を、ふたりで考えればいんけな」


〈それでも無理だったら、どうする?〉


「大丈夫だんけ。ひとりでは無理でも、ふたりなら、たいがいは乗り越えられる」


50メートルも離れた距離を保ちながら、わたしと健ちゃんは見つめ合った。


先に両手を動かしたのは、健ちゃんだった。


「おれを、信じて欲しい」


わたしは頷いた。


不安ばかりの毎日だけれど、わたしは健ちゃんを信じるしかないのだ。


好きだから、どうしようもない。


わたしは、一気に階段を駆け上がった。


心臓が、激しく飛び跳ねる。


息があがる。


〈信じる〉


わたしが手話をすると、健ちゃんはぱっと笑顔になった。


「シチュー、まだ途中だんけ」


アパートに一緒に帰ろう、と健ちゃんが手のひらを差し出してきた。


わたしも、手を重ねる。


健ちゃんは空を見上げて、何かを言ったようだった。


わたしは、健ちゃんの肩を強めに叩いた。


〈何て言ったの?〉


でも、健ちゃんはただ笑ってばかりで、はぐらかしてばかりだった。


その時、健ちゃんが言っていた言葉を知るのは、春になってからのことだった。