恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈本当に。すごく、いい天気だね〉


わたしは、からかうように手話をして、雪雲が広がっている空を指差した。


健ちゃんが吹き出して笑っているのが見えた。


「おれたちに何かある日は、いつも、雨が降ってるんけ」


本当に。


頷きながら、わたしは一段、階段を上った。


健ちゃんは、手のひらで霧雨の感触を確かめている。


「冬の時雨だんけ」


〈どんな音?〉


しばらくして、健ちゃんの指が音を示した。


「今日は、さ、ら、さ、ら」


わたしは空に手のひらを向けて、微笑んだ。


これ、さらさらしているのかな。


雨にも性格があるんだと思った。


激しい性格、荒い性格、やわらかい性格、優しい性格。


雨って、人間の気持ちみたいだ。


わたしは、健ちゃんを見つめた。


歩道橋の上で、健ちゃんが手話を始めた。


「おれと、真央は、こんな事でだめになるのか? おれは、そうは思ってねんけ」


目の前が、涙で滲んでいく。


「本当にだめだと思ったら、その時にまた、考えよう」


〈考える?〉


わたしは首を傾げた。


健ちゃんは、無邪気な顔で微笑んでいる。