恋時雨~恋、ときどき、涙~

赤、青、白、黒、ワインレッド……タイヤを履いたジェリービーンズが道路を行き交う。


濡れたアスファルトにタイヤが擦れて、細かいしぶきが上がっている。


みずみずしい香りが鼻先をくすぐる。


わたしは、人並みを掻き分けるように駆け出した。


歩道橋を駆け上がろうとした時、くたびれたスーツのサラリーマンと肩がぶつかってしまった。


わたしはとっさにぺこりと頭を下げた。


振り向いたサラリーマンは不機嫌な顔をして、わたしを睨んでいた。


「謝れよ」


わたしは肩をすくめて、もう一度、今度は深く深く頭を下げた。


顔を上げた時、サラリーマンはもうすたすたと早足で行ってしまった。


しわだらけのスーツの背中が、つめたく見えた。


こんな時は、さすがに少し落ち込む。


どうして「ごめんなさい」すら、わたしは言えないのだろう、と。


わたしは、ぶつかってしまった拍子に落とした鞄を拾い上げて、息を吸い込んだ。


冬の澄んだ空気は好きな方だ。


心が浄化されていくような気がするから。


もう一度、空気を胸いっぱいに吸い込む。


そして、歩道橋を見上げた時、わたしは息を呑んだ。