恋時雨~恋、ときどき、涙~

「東側に窓があるのね。朝日が射し込むときれいよ。きっと」


果江さんは部屋のドアを開け放ったまま、わたしの前に座った。


そして、その部屋を指差した。


「ここに住む。どうせ、その部屋、使ってないんでしょ」


「なにバカなこと言ってるんだよ。ダメに決まってるだろ。あまり好き勝手言うなよ」


と亘さんは眉間にしわを寄せて、果江さんを睨んだ。


健ちゃんも呆れた顔をした。


その時、キッチンから汐莉さんが現れた。


4人分のティーカップをトレイに乗せていた。


中身はコーヒーだと、すぐに分かった。


熱い湯気から、ほろ苦くて香ばしい匂いがしたからだ。


汐莉さんはひとりひとりにカップを差し出しながら、唇を動かした。


「果江。いい加減にしなさいよ。真央ちゃんの気持ちも、考えな」


汐莉さんは、わたしににっこり微笑んだ。


果江さんが、汐莉さんの腕を掴む。


「なによ。汐莉は、こんな子の肩を持つっていうの?」


「果江……いい加減にして。果江が、健ちゃんを捨てたんじゃない。今になって、それはないよ」


果江さんはひどく傷付いた顔をして、頭を垂れ下げてしまった。