恋時雨~恋、ときどき、涙~

ゆっくり、唇を動かしてくれている。


「早く戻った方がいい。飛行機のチケット、取ってやるから。頼むから、手術、受けてくれないか」


果江さんは返事をしなかった。


背中を丸めて、うつ向いてしまった。


健ちゃんが、わたしの肩を叩いた。


「果江は危険な状態だんけ。元気に見えるけど、爆弾抱えてる。早く手術しないと危ねんけ」


わたしは、果江さんを見つめた。


そんな状態で日本へ来たなんて……。


第一印象は本当に最悪だったけれど、わたしは果江さんが心配になった。


わたしは、健ちゃんに通訳をお願いした。


〈手術、受けてください。みんな、心配しています〉


健ちゃんがそれを伝えると、果江さんはわたしを睨み付けた。


「あなたに、何が分かるの?」


わたしも、果江さんを睨んだ。


〈わたしの友達は、彼氏を亡くしました。見ていられなかった。健ちゃんと、亘さんに、そんな思いはさせたくないから〉


健ちゃんが訳して伝えると、果江さんはまたうつ向いてしまった。


亘さんが、気遣うように果江さんの肩を抱いた。


「手術、うけろよ」


しばらく、沈黙が続いた。