恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしはハッとして、とっさに手話をした。


〈ごめんなさい〉


果江さんはますます驚いた様子だった。


わたしを見つめて固まっている。


仕方のないことだ。


反応がなければ、声も出さず、両手を動かしたわたしを不思議そうに見つめていた。


果江さんが両耳を手でふさぐジェスチャーをして、唇を動かした。


「聴こえないの?」


わたしは、果江さんの目を見つめながら頷いた。


果江さんはばつの悪い顔をして、わたしに頭を下げた。


「態度、悪くして……ごめんなさい。聴こえないなんて、知らなかったから」


わたしが首を振ると、果江さんはもっと目を丸くして身を乗り出してきた。


「聴こえないんでしょ? なんで分かるの?」


その迫力に、一瞬、たじろいでしまった。


わたしは、健ちゃんの肩を叩いた。


〈唇、読めるって説明して〉


健ちゃんから説明を受けた果江さんは、ひとつ溜め息をこぼして、また座り直した。


「私より、可哀想ね」


それは、わたしがいちばん落ち込んでしまう言葉だ。


原子爆弾や核兵器で攻撃されるくらい、ショックをうける。


可哀想。


そう思われるのが、いちばんきらいだ。