恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは慌てふためいて、ライオン丸の右腕に飛び付いた。


こっちは必死なのに、わはははとライオン丸は大きな口で笑った。


本当にへんな人に関わってしまった。


息を乱しているわたしの肩を、ライオン丸が叩いてきた。


「なる? 友達」


わたしは、何も答えなかった。


その代わりに、さっき拾った木の棒で砂に書いた。


【めんどくさくないの?】


ライオン丸はきょとんとした顔をして、その文字を見つめていた。


わたしと友達になるという事は、そういう事なのだ。


めんどくさい。


会話をするのも、いちいち時間がかかる。


手話だったり、メールやラインだったり、筆談だったり。


ひとつひとつの事に、目配り気配りをしなければならないのだ。


何も答えずに砂に書かれた文字を見つめているライオン丸に、わたしは背を向けて歩き出した。


すると、ライオン丸はわたしの正面に回って、通せんぼのポーズをとった。