恋時雨~恋、ときどき、涙~

健ちゃんは、たまにおっちょこちょいだ。


わたしは溜め息を落として、仕方なくコンロを止めた。


せっかく、きつね色に炒められたにんにくが焦げてしまう。


でも、わたしは、何かおかしい事に気付いた。


どうして、健ちゃんは戻って来ないのだろうか。


熱々の湯気が、薄くなり消え始めていた。


わたしは、急いで玄関へ向かった。


何が起きているのか、すぐには分からなかった。


玄関には、健ちゃんの大きな背中があった。


だから、誰が来たのか見えなかった。


わたしが背中を叩こうとした時、健ちゃんがフローリングの床にボウルを落とした。


ステンレスのボウルはバスケットボールのように強く跳ね上がり、フローリングの床にくし切り玉ねぎが散らばった。


つん、とした独特の匂いが広がる。


健ちゃんは突っ立ったまま、微動だにしない。


わたしは、玉ねぎを拾いながら、健ちゃんの背中を見つめた。


微かに震えて見えるのは、わたしの気のせいだろうか。


玉ねぎを全部拾い、ボウルに入れ直して、わたしは健ちゃんの肩を叩いた。


健ちゃんが左によろめいて、壁に頭を打った。