恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしが取り返そうとすると、ライオン丸は手のひらを合わせて、お願い、のジェスチャーをした。


「友達に、なって欲しんけ」


わたしは呆れた顔を作って、首を振った。


わたしと友達になっても、良い事などひとつも無いのだ。


面倒な事ばかりだ。


それなのに、友達になろうと言ってくるライオン丸が、わたしは不思議でたまらなかった。


返して、と言わんばかりにわたしが手のひらを差し出すと、ライオン丸は右手を高く突き上げて、海の方を向いた。


その手には、わたしの白いスマホがしっかりと握られている。


振り向き様に、ライオンは言った。


「ようし。そっちがその気なら、こっちだって最終手段だんけ」


にやり、と八重歯を見せたライオン丸に、わたしは「えっ」という顔をした。


「友達にならないって言い張るなら、これ、海に捨ててやるんけ」