恋時雨~恋、ときどき、涙~

見上げると、順也が両手を夜空にかざして、歌い始めた。


「あめあめ、ふれふれ……」


わたしも真似をした。


〈べしゃべしゃ、べしゃべしゃ〉


ぴちぴち、ちゃぷちゃぷ、のところを指文字に変えてべしゃべしゃとやってみせると、順也が笑った。


「健太さんから、またへんな音、教えてもらったの?」


〈へんじゃないよ。楽しい、音〉


順也が窓枠に手を掛けて、肩を震わせて笑った。


「明日、練習試合なんだ。応援に来てよ」


わたしは頷いた。


〈何時から?〉


順也が、10本の指を出した。


「10時。じゃあ、おやすみ」


〈おやすみ〉


順也の部屋の明かりが消えたのを確認して、わたしは窓を閉めた。


順也の夢が、優しいものだといい。


窓にぶつかる雨が次第に穏やかになり、春雨のようにやわらかくなった。


時雨のあとは、優しい雪が降る。


健ちゃんが教えてくれた事を、わたしは信じていた。