恋時雨~恋、ときどき、涙~

ますます、胸が苦しくなった。


しばらく見つめていると、カーテン越しに人影が動いた。


カーテンが開き、順也が顔を覗かせた。


窓を開けて、雨を見て溜め息をついている。


わたしは、窓枠を強く叩いた。


順也がその音に気付いたらしく、わたしに微笑んだ。


「今夜は、雨だね」


〈時雨、だよ〉


こういう時、手話も悪くないなと思う。


離れていても、会話できてしまうのだ。


小さい頃から、たまに、こうして順也と会話をしている。


健ちゃんが、わたしをどけて窓から顔を出した。


雨の音は、うるさいらしい。


健ちゃんも、手話で順也に話し掛ける。


「時雨だんけ」


健ちゃんの手話を見て、順也が吹き出しているのが見えた。


「真央も、同じこと言ってた」


健ちゃんが目を丸くして、わたしを見つめた。


「真似すんな」


〈違う! わたしが先に言ったんだよ〉


わたしが小突くと、健ちゃんがわははははと笑った。


そして、再びお父さんとオセロに白熱していた。


今夜は、月が見えない。


わたしと静奈の距離のように、夜空が遠く遠くに感じる。