恋時雨~恋、ときどき、涙~

「真っ白な雪。その頃には、真央も静奈ちゃんも、真っ白な心になってるといいな」


健ちゃんは微笑んでいた。


優しい雪、か。


早く見たい。


〈わたし、諦めない〉


健ちゃんの口元から、八重歯がこぼれた。


ほっとした。


健ちゃんが笑うと、わたしは安心する。


「真央の負けん気は、1等賞だんけ」


わはははは、と健ちゃんは大きな大きな口で笑った。


「時雨は長くて切ないけど、優しい音がするんけなあ」


健ちゃんが、フロントガラスに打ち付ける長雨を見つめて、微笑んだ。


そうなのか。


わたしも、フロントガラスを見つめた。


これ、優しい音がしてるのかな。


触れば、分かるかな。


フロントガラスに手を伸ばした時、健ちゃんが腕を掴んだ。


心臓が飛び跳ねる。


「今日、まだ一回もしてねんけ」


健ちゃんの無邪気な顔が近付いて、わたしの唇に触れようとした時だ。


健ちゃんがびくりとして、顔を上げた。


わたしの後ろを見て、健ちゃんが青ざめている。


振り向いて、わたしもびっくりした。


ウインドウ越しに、ずぶ濡れのお父さんが、怖い顔をして貼り付いていたのだ。