恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは、健ちゃんの背中に腕を回してしがみついて泣いた。


正直、どうしたらいいのか分からなくなっていた。










外に出ると、雨が降っていた。


冷たい、凍てつくような雨だった。


家に送ってもらう最中、わたしと健ちゃんは目も合わせなかった。


わたしも、健ちゃんも、たぶん同じ事を考えていたのだと思う。


果たして、今日の静奈との再会が本当に良かったのか。


フロントガラスに打ち付ける長雨を、ワイパーがはける。


静奈の涙のようだった。


わたしは、静奈と幸の事で頭がいっぱいだった。


健ちゃんが思い悩んでいた事にさえ、気付けていなかったのだ。


家の前に到着して初めて、わたしと健ちゃんは目を合わせた。


〈今日の雨は、どんな音?〉


わたしが訊くと、健ちゃんはわたしの手のひらに指で書いた。


【べしゃ べしゃ】


「べしゃべしゃ、だんけ。真央と静奈ちゃんの涙みたいだんけ」


べしゃ、べしゃ。


なんだか、汚くて悲しい音だ。


健ちゃんが、わたしの髪の毛を撫でる。


「秋の時雨だんけ。時雨がやめば、雪が降るんけ。優しい雪だんけな」


優しい、雪。