恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈でも、ラインするから。返してくれなくてもいいから、読んでね〉


静奈は唇を噛んで、小さく頷いた。


エレベーターが開いたようだ。


わたしは慌てて両手を大きく動かした。


〈順也は、今でも静奈を想ってるよ、だから〉


わたしの手話を途中で遮るように、静奈は泣きながら言った。


静奈の両手がしっかり動いた。


「真央にだけは、知られたくなかった。見られたくなかったよ!」


静奈は苦しそうな顔をして、エレベーターの中に吸い込まれて行ってしまった。


どうして、わたしはあの時、すぐに静奈を追い掛けなかったのだろうか。


もう二度と会えないかもしれないのに。


わたしは、心の片隅で確信していたのだ。


近い未来、静奈と再会できることを。


わたしは暖房が行き届いた暖かい廊下に立ち尽くした。


立ち尽くして、泣いた。


後ろから健ちゃんに抱きすくめられて初めて、体から力が抜けて行った。


「ひとりじゃどうにもできないことも、ふたりだったらできることがあるんけな。そのために、おれが真央のそばにいるんけ」