恋時雨~恋、ときどき、涙~

「健太さんがいるじゃない。付き合ってるんでしょ?」


わたしが何も答えずにいると、水くさいな、と静奈が笑った。


「雰囲気で分かるよ。健太さん、真央のこと大切に思ってるの分かるもん」


そして、静奈は手話で健ちゃんに言った。


「真央を、幸せにしてください。私の、いちばん、大切な友達だから」


お願い、と静奈は健ちゃんに頭を下げた。


わたしは、静奈に抱き付いた。


やっぱり、静奈は静奈だ。


何も変わっていない。


優しくて、責任感が強くて。


わたしの大好きな女の子だと実感した。


静奈がわたしを突き放して、廊下に飛び出した。


ドアが閉まる。


静奈の残り香が、涙を誘った。


健ちゃんがわたしの肩を叩いた。


「いいのか? もう、言いたいことないのか?」


わたしはドアノブを回して、廊下に飛び出した。


ドアが開く音に反応したのだろう。


エレベーターの前で、静奈が振り向いた。


〈また、ラインしてもいい?〉


「だめ」


静奈は、泣きながら首を振った。


「もう、私と関わらない方がいい。幸せになれなくなる」