恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは静奈の右手を掴んで、そのリングに触れた。


静奈はハッとした顔をして、とっさに右手を引っ込めた。


「未練タラタラだね、私」


わたしは首を振った。


〈未練タラタラは、静奈だけじゃない〉


「え?」


静奈が不思議そうな顔をした。


〈順也は、もっと未練タラタラ。まだ、リングつけたままだよ〉


わたしは笑いながら、静奈の右手の薬指を差した。


静奈の目から、涙があふれた。


「もっと、早く知りたかった」


もっと早く教えてあげたかった、そう思って、わたしは悔しくてたまらなかった。


去り際に、静奈がわたしに微笑んでくれた。


「さっきのは嘘だからね」


〈さっき?〉


わたしが首を傾げると、静奈は涙で頬を濡らしながら言った。


「手話が面倒だなんて、一度も思ったことないよ。真央と過ごす毎日が楽しくて仕方なかった」


気が付いた時には、わたしの頬は大量の涙で濡れていた。


わたしは、必死に両手を動かした。


〈お願い。もうこんなことはやめて。静奈がいないと、つまらない〉


静奈は首を振って微笑んだ。


「大丈夫」


そう言って、静奈は健ちゃんを見つめた。