恋時雨~恋、ときどき、涙~

次の瞬間、わたしはカンガルーのように飛び跳ねて、ライオン丸に飛び付いた。


せっかく取り返したスマホを再びを奪われてしまったのだ。


右手にわたしの、左手に自分のスマホを持って、その両手を空に突き上げ、ライオン丸は何かを始めた。


白いスマホと、黒いスマホの先端が向き合っている。


「すぐ返すから」


とライオン丸の唇が動いた。


わたしは、夢中になってスマホを取り返そうとした。


でも、思っていた以上に、ライオン丸は背が高く腕が長い。


どんなに飛び跳ねても、わたしの手がその手に届く事はなかった。


わたしは、ライオン丸の膝を蹴っ飛ばした。


「痛ってえ!」


ライオン丸の整った顔立ちが歪んだ。


「狂暴な女だんけ」


むっとした顔で、ライオン丸はようやくスマホを返してくれた。


良かった……。


わたしは、スマホを握り締めた。