恋時雨~恋、ときどき、涙~

静奈の健気さが、そのがりがりの体に現れているようで、切なかった。


抱きしめられずにはいられなかった。


時間にして約1時間は涙を流していた。


こんなにも短くて切ない120分があったなんて、わたしは知らなかった。


時間が来てしまった。


「お金は要らないや。特別よ。じゃあ、時間だから」


帰ろうとする静奈を、健ちゃんが引き止めた。


「このままでいいのか?」


静奈が微かに口元を緩ませた。


「いい。どうせ、もう、この世界から抜けられない」


わたしは絶句してしまった。


漫画や小説のように、わたしがバカでした、もうやめるわ、なんて静奈は言わなかった。


やっぱり、現実なんだと思った。


「思ったより、この世界は居心地がいい。みんな、それぞれ、傷を抱えた子が集まってる。居心地がいいの」


そう言った静奈の表情には、安堵のようなものが感じられた。


苦しかった。


もう、わたしや健ちゃんの力ではどうにもできない。


そう思った。


現実は、漫画や小説のようにはうまくいかないと思い知らされた。


ドアノブに手を掛けた静奈が振り向いて、両手を動かした。