恋時雨~恋、ときどき、涙~

でも、健ちゃんは背中を向けたまま「お願いだんけ」と呟いて、ついにはうずくまってしまった。


付き合って間もないというのに、もう、嫌われてしまったのだろうか。


わたしはソファーに座り直して、うつ向いた。


しばらくして、健ちゃんが慌てた顔でわたしの肩を叩いた。


「違うんけ」


でも、やっぱり背を向けたままだった。


「嫌いとか、そういうんじゃねんけな」


すごい。


健ちゃんはエスパーなのかも、と感心してしまった。


わたしの気持ちが伝わったのだろうか。


「違うんけ……実は、真央のこと襲いそうだから、できれば離れて欲しんけ」


わたしは笑ってしまった。


そんなことはどうでも良かった。


顔を真っ赤にして、わたしに背を向ける健ちゃんが、また少し近くに感じた。


その時、健ちゃんの顔色が一変した。


部屋のドアを見つめたあと、健ちゃんが言った。


「来た」


健ちゃんは立ち上がり、ドアの方へ向かった。


チャイムが鳴ったらしい。


ドアの正面に立ち、健ちゃんが言った。


「開けるぞ」


頷くことも、首を振ることも、わたしはできなかった。