恋時雨~恋、ときどき、涙~

電話を切り、深呼吸をしたあと、健ちゃんがおもむろに両手を動かした。


「いた。これから来るって。一応、120分時間とったから、ゆっくり話できるんけ」


緊張の糸が少しだけ緩んだ。


〈分かった〉


わたしは頷いて、ソファーにもたれかかった。


健ちゃんも、わたしと同じようにソファーにもたれた。


スマホをタップして時刻を確認すると、19時をすぎたばかりだった。


健ちゃんが、わたしの肩を叩く。


見てみると、健ちゃんは真剣な顔で手話をした。


「もし、静奈ちゃんだったら、どうする気?」


〈やめるように言う〉


「じゃなくて。順也には、言わないのか?」


わたしは、健ちゃんの肩を強く突いた。


〈言わない。静奈が傷付く〉


それに、順也も。


順也は今でも、静奈を想っているのだ。


順也に確認したわけではないけれど、わたしには分かる。


順也の右手には今も、あのリングが輝いているのだから。


静奈を忘れている方がおかしい。


「そんなに怒るなよ」


健ちゃんは背中を丸めて、テレビのリモコンに手を伸ばした。


わたしは、唖然としてしまった。