恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは、近くに落ちていた細い木の棒で砂に書いた。


【つまらない】


すると、ライオン丸は大きな口を開けて、わははははと笑った。


「何だ、同じだんけ」


ライオン丸の耳たぶに揺れるピアスが眩しかった。


【おなじ?】


わたしが砂に書いて首を傾げると、ライオン丸は自分の唇をつんつん指差した。


「わ、か、る?」


わたしが本当に理解しているかどうか、確かめているようだ。


頷いてみせると、ライオン丸は大きな口でわかりやすいように言った。


「音がある世界も、つまらねんけ。なんかさ、毎日、たいくつ」


そうなんだ。


少しだけ、嬉しかった。


この広い地球上には、わたしの知らない音がたくさんあふれているのだろう。


それは、知っている。