恋時雨~恋、ときどき、涙~

汐莉さんの話をしたり、順也の話をしたり。


でも、会話に静奈が出てくることはなかった。


だから、少しほっとしていた。


18時になった時、取引先の会社の人と会う約束があるから、と亘さんは帰って行った。


わたしは、健ちゃんと夕飯を済ませて帰ることになった。


同じ、きのこのドリアを食べていた時、手を止めてぼうっとしていたわたしの顔を、大きな手が扇いだ。


「真央? どうした? 食べたくないのか?」


わたしは、慌てて首を振った。


〈今日、講義が難しかった。疲れただけ。食べる〉


でも、全然、全く、食べる気にはなれなかった。


やっぱり、食べ残してしまった。


会計の時、レジの前で健ちゃんがわたしの肩を叩いた。


わたしは、びっくりしてしまった。


また、呆然として、静奈と幸の事を考えていたのだ。


健ちゃんが、怪訝な面持ちでわたしを見つめていた。


「大丈夫か? ぼーっとして」


〈ごめん! わたしも、お金出すよ〉


鞄の中を引っ掻き回して財布を取り出そうとすると、健ちゃんに手を掴まれた。


「いい。おれのおごりだんけ。でも、1円玉ある?」


どうやら、端数分の小銭が一枚足りないらしい。