恋時雨~恋、ときどき、涙~

「耳が聴こえないのって、どんな感じ? あんな色してる?」


わたしは、水平線を見つめた。


薄い群青色の水と、夕陽の焼けた朱色が溶け合った色は、厳かで不思議な色をしていた。


冷たい色なのか、暖かい色なのか、どちらとも言えない色だ。


太陽が沈んだばかりの仄明るい水面が、細かく凪いでいる。


波の音って、どんなだろう。


静かなんだろうか。


聴いた事がないので、わたしには想像もつかない。


わたしは、小さく弱く首を振った。


分からない。


耳が聴こえない感じの説明の仕方なんて、わたしには分からなかった。


「えー……じゃあ、どんな感じなんだよ」


すごく楽しそうに笑うライオン丸を見て、わたしは固まってしまった。


「本当に、一切、何も、聴こえないのか?」