恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈そういうこと?〉


わたしが首を傾げると、順也はにっこり笑って頷いた。


「健太さんは、本気だよ。だって、手話を覚えたくらいだ」


どうしてだろう。


順也に言われると、本当にそんな気がしてくる。


順也の優しい手話は、わたしの心にすとんと落ちる。


急下降する、トンビのように。


健ちゃんの車が、わたしたちの前に停車した。


「待ってな。トランク、片付けないと車椅子が入らねんけな」


車を降りるなり、健ちゃんはトランクを開けて中を片付け始めた。


手伝おうと思い、健ちゃんの方へ行こうとしたわたしの腕を、順也が引っ張った。


〈なに?〉


訊きながら、少しだけ緊張した。


いつになく、順也が真面目な顔付きだったからだ。


健ちゃんがこっちを見ていない事を確認して、順也がゆっくりと両手を動かす。


「真央も、それくらいの覚悟をしないといけないよ。いい?」


わたしは、頷いた。


順也も頷く。


「別に、真央を差別してるわけじゃないよ。ただ、誰かと付き合うって事は、それなりの覚悟をしなきゃいけない」


〈覚悟?〉