恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈耳が聴こえる健ちゃんに、わたしのことは分からないよ!〉


もう、残り僅かな夕陽が目にしみて痛かった。


痛くて、悲しくて、苦しくて……悔しかった。


〈健ちゃん、言ったよね? 我慢すると鼻が伸びるって。わたしの鼻は、海の向こうまで伸びてる〉


言葉にできない想いを伝えたくて、はがゆかった。


〈わたしは、我慢ばかりしてきた〉


どうして、わたしは気持ちを声に出せないのだろうか。


〈でも、そうしないと、みんなが困った顔をするから。結局、健ちゃんも、そういう目でわたしを見てる!〉


健ちゃんは違うと思っていたのに。


〈そういう生ぬるい同情なら、要らない〉


息切れしてしまうほど、わたしは両手を乱暴に動かしていた。


どんなに必死に手話をしても、健ちゃんに伝わる事はないのに。


健ちゃんの唇が動いた。


わたしは、自分の目を疑った。


それを読んだ時、息が止まってしまったんじゃないかと、不安になった。