恋時雨~恋、ときどき、涙~

「もう会わんて決めとるのに、こうして会ってしまうのは、真央たちには何かの縁があんねやな」


西の空が、茜色に染まり始めていた。


〈縁?〉


「せや。縁が無い人と、そう何度も会うたりできん。縁があるから、会うてしまうんや」


わたしは肩の力を抜いて、幸を見つめた。


「縁もくそもない相手には、どんなに会いとうても、会えへん」


バス停の方に視線を飛ばすと、健ちゃんはまだ両手を広げて振り回していた。


右手に、何かを握っている。

夕陽が反射して、海の水面のように眩しい。


スマホだ。


わたしは、息を呑んだ。


何で?