恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは頷いた。


だって、今はそうとしか言えないのだ。


毎日ラインでメッセージを送り続けているし、既読が付くけれど、静奈からの返信は一切ない。


小さくすくめたわたしの肩を、菜摘が叩いた。


「そっか。人それぞれ、いろいろあるからね。ただ、心配しちゃった」


【大丈夫
 なつみは優しいね】


ルーズリーフにそう書いて、わたしは微笑んだ。


「でも、辞めちゃったのかと思ってたよ。だって、昼間から、あんなところに居るから」


菜摘の表情が、僅かに歪んだ。


わたしは菜摘の肩を叩いて、ルーズリーフを強引に差し出した。


【静奈に会ったの?
 いつ?
 どこで?】


「え……ちょっと待って」


菜摘は困った顔をして、瞳を泳がせた。


「どうなってるの? もしかして、会ってないの?」


わたしは頷いて、ルーズリーフにボールペンを走らせた。


【9月のはじめから
 音信不通】


「うそ」


菜摘は黒目が飛び出てしまいそうなほど目を開いて、でも、慌てて笑った。


その時、教室に先生が入ってきた。


菜摘は「ごめん。私が見たのは長澤さんじゃないかも」と言って、正面を向いた。