恋時雨~恋、ときどき、涙~

にしの、けんた。


わたしはほっとして、長めに息を吐き切った。


でも、視線をウインドウに戻して、また固まってしまった。


今度は、半分閉まっていたウインドウに、妖怪の顔が貼り付いていたのだ。


透明なガラスに粘着テープのように貼り付いて変形していたのは、ライオン丸の顔だった。


元々、きれいな目鼻立ちなのだと分かる。


でも、横にある顔はあまりにも無惨で、残念で、わたしは目を点にして固まるしかなかった。


おかしな人だ。


ゾンビが大きな口を開けて、楽しそうに笑っている。


へんな人だ。


わたしは、今まで、こんなにへんな男の人を見たことがない。


開いた口がふさがらなかった。


サイドミラーを覗いてみる。


わたしは、間抜けな顔をしていた。