恋時雨~恋、ときどき、涙~

謎だらけの、でも、優しさが溢れる微笑みだった。


「せやな。講義もぜんぜん来とらんしな。せやけど、大丈夫や。そのうち、ひょっこり出てくるわ」


ひょっこり、出てくるものなのだろうか。


わたしには、そうは思えなかった。


もう、静奈と会えないのかもしれない。


毎日、その不安と恐怖ばかりが、わたしの頭の中で膨らんでいる。


「大丈夫やって。私が保証したるわ。真央の相方は、そんな中途半端な女やないで」


まるで、静奈を知り尽くしたような幸の口ぶりに、わたしは不信感を募らせた。


そもそも、なぜ、幸が急にわたしに近付いてきたのか、それが不思議だった。


わたしが不信感を抱いた事に、幸が気付いてしまったようだった。


「相方のこと、信じたりや」


そう言って、幸は話題を180度変えた。


「見ててみい。びっくりすんで」


わたしの前に立ちはだかり、幸はぎこちなく手話を始めたのだ。


「元気出しい、って、こうやるんやろ?」


わたしはびっくりした。