恋時雨~恋、ときどき、涙~

「あ、ああ、せや。私も用事があるんやったわ」


わざとらしい。


わたしは、幸の細い腕を強く引っ張って睨んだ。


知っとる、幸はそう言ったよね?


何を、知っとるんだろうか。


わたしは、メモ帳にボールペンを急ぎ足で走らせた。


【幸は何者?
 順也を知ってるの?】


それを見た幸が吹き出した。


「何者、て。サスペンスホラーのドラマみたいやな。ごめん、ごめん。実は、夏休みにな、真央の相方と偶然、町で会うてな」


その時に、静奈は順也のことを幸に話したらしいのだ。


わたしは、本能に従う獣のように、幸の話に食い付いた。


静奈の消息を、幸は知っているかもしれない。


なぜか、そう直感した。


【静奈と連絡とってる?
 ここ1ヶ月
 連絡とれなくて困ってる】


わたしがメモ帳を差し出すと、幸は不思議な表情を浮かべた。