恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしがもじもじしていると、幸がにっこり微笑んだ。


「用事があんねやったら、無理せんでもええよ。そんな、急ぎやないから」


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。


【また今度でもいい?
 今日は
 おさななじみと約束がある】


メモ帳を見るなり、幸が穏やかに笑った。


「ほんまや。言うておった通りや」


何?


わたしは首を傾げた。


不思議そうに見つめていると、幸はハッとした顔をした。


「何でもない。気にせんといてや。幼馴染みと、仲ええんやな」


わたしは、にっこり笑って頷いた。


順也のことを、自慢したくなった。


順也ほど心の優しい男の子はいないよ。


わたしにとって、宇宙一のお兄ちゃんなのだ、と。


でも、幸に手話は通じないし、ひとつひとつをメモ帳に書き出していたら、日が暮れてしまう。


わたしは鞄からレポート用紙を取り出して、簡単な相関図というのを書き始めた。