恋時雨~恋、ときどき、涙~

なんと説明すれば良いだろうか。


例えば、小学生だ。


それも、低学年。


夏休みに里山へ繰り出し、オオクワガタを発見した時のように、好奇心旺盛な目をライオン丸はしていた。


真っ直ぐな瞳だった。


不覚にも、わたしまでわくわくしてしまったほどだ。


くっきりとした奥二重瞼で大きな形の目を、わたしは忘れる事ができなかった。


同情心や困惑の目で見つめられる事はあっても、あんなふうに楽しそうな目で見つめられたのは、本当に初めてだ。


わたしは戸惑った。


心臓がおかしい。


わたしの心臓は、うさぎのように飛び跳ねていた。


ふと、目を開けると、目の前には大きな大きな怪獣の手のひらがあった。


大きく開いた5本の指が、わたしの顔を鷲掴みしようと息を潜めていたのだ。


一瞬、ついに息が止まってしまったのかと思った。


半分ほど開いたウインドウの外から生えたように伸びてきていたのは、ライオン丸の長い腕だった。