恋時雨~恋、ときどき、涙~

こんな事は日常茶飯事なので、馴れている。


みんな、知らず知らずのうちに、わたしがろうあだという事を、忘れてしまうのだ。


そして、都合悪そうな顔をする。


「ごめん、真央ちゃん。わざとじゃないの」


と肩をすくめる菜摘に、わたしは首を振りながら微笑んだ。


「私も。遠慮しとくわ。用事があんねや。また誘ってな」


幸が言うと、菜摘は心なしかほっとしたような顔をして、校舎に戻って行った。


休講になるなんて、久しぶりの事だ。


それに、今日は順也のバスケットの迎えに行く日だ。


差し入れでも用意して、練習を見学しようかな。


わたしがお弁当箱を片付けていると、幸が肩を叩いてきた。


「今日、ひま? 相談があんねん。ついて来て欲しいとこがあるんやけど」


幸は真面目な顔付きをしていた。


わたしは、この時、迷わずに頷いて幸について行くべきだったのだ。


でも、わたしは迷った。


せっかく誘ってくれているのは、嬉しい。


でも、やっぱり、順也の事が心配だった。