恋時雨~恋、ときどき、涙~

幸は、小花のように可憐な雰囲気を持っているのに、花火のように豪快に笑う女の子だった。


心から素直に笑う子だ、と思った。


彼氏の話をする時は、特に。


「あいつな、私の事はたまに忘れるんやけど。絶対、忘れん事があんねや。私との約束は、いつも覚えとる」


【やくそく?】


メモ帳を差し出すと、幸はその約束を教えてくれた。


「せや。いつか、ハワイに行こうって約束しとるんや。絶対、ふたりで見ようなて、約束したんやで」


普通、夕陽は厳かな朱色だけど、ハワイには不思議な色の夕陽があるらしいのだ。


黄緑色の夕陽。


それを見るのはとても難しいらしく、でも、見る事ができると願いが叶うらしいのだ。


【何をお願いしたいの?】


メモ帳に書いて訊くと、幸は秋の青空を見上げて微笑んだ。


「別にな、病気が治るようにとかは願わん。一生、そばにおりたいとも言わん。ただな、生まれ変わっても、また出逢えますように、て」


それなら叶いそうやろ? 、と幸は言った。