恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしはたまらなくなって、幸の手を握った。


背が大きいのに、幸の手は思っていたより遥かに小さかった。


何と言葉をかけたらいいのか分からなくて、ただ、メモ帳を握りしめた。


「今日も行って来たんやけど、誰や、言われたわ。お前の彼女やっちゅうねん」


あほか、と無理して笑う幸を見ていられなくて、わたしはうつ向いてしまった。


幸が、わたしの頭を手のひらで軽く叩いた。


顔を上げると、幸はとても穏やかな微笑みを浮かべていた。


「なんで、真央が暗くなっとんのや」


ひとつ貰うでー、と無邪気に笑って、幸はわたしのお弁当箱の卵焼きを、おちょぼ口に放り込んだ。


「うま! 絶品や」


秋の風が、幸のきれいな髪の毛をなびかせていた。


わたしが、それ、を指差すと、幸は嬉しそうに微笑んだ。


「これな。彼氏がくれたんやで。きれいやろ?」


きれい。


わたしが頷くと、幸は頬を紅く染めてはにかんだ。


「言うておくけどな。私の彼氏は、めっちゃイケメンやで。真央が見たら、たぶん、ひっくり返ってまうわ」