恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしはいつものように、ひとりでお弁当を食べようと中庭のベンチに座って、お弁当箱を広げた。


そこに息を切らして走って来たのが、幸だった。


「探したで。隣、座ってもええ?」


幸は、今にも下着が見えてしまいそうな短いスカートを履いていた。


わたしは、ベンチに広げていたお弁当箱を寄せて、頷いた。


「ほな、お言葉に甘えさせてもらお」


幸はにっこり微笑んで、わたしの隣に腰を下ろした。


いい匂い。


甘くて、お花畑のような可愛らしい香りがした。


わたしは、いつも持ち歩いていれメモ帳に、ボールペンを走らせた。


焼きそばパンを頬張る幸に、メモ帳を差し出す。


【なんでこっちの短大に?
 地元の短大に行けばよかったのに】


「ああ。わけありや」


幸の笑顔が、一瞬、陰った。


おちょぼ口いっぱいに頬張っていたパンを、カフェオレで流し込んだあと、幸が言った。


「彼氏のあと、追って来たんや。私の彼氏、こっちの施設におんねん」