恋時雨~恋、ときどき、涙~

ビー玉のように、丸い大きな目。


きれいな扇形状に開いた、長い睫毛。


アッシュブラウン色の、長い髪の毛。


雑誌のモデルさんのような、華奢なスタイル。


「なんや。手話できんでも、あんたと話せるの知っとったら、もっと早う仲良うなりたかったわ」


彼女はにっこり微笑んで、わたしのルーズリーフにシャープペンシルを走らせた。


【戸田 幸
 あんたのこと、真央ってよばせてもらうで】


「ええやろ? 仲良うしてや。さち、って読むんや」


気が付くと、わたしは頷いていた。


たぶん、幸の笑顔の眩しさに圧倒されてしまったのだ。


これが、幸との出逢いだった。


幸は、わたしの心に、不思議なほどすんなりと住み着いた。


昔からずっと仲良くしてきた友達のような、不思議な空気を持っている女の子だった。


幸は、やっぱり関西出身の女の子だった。


どうして、そんな遠いところから、こんな東北の小さな短大に来たのか、それがいちばん不思議だった。


関西に行った事はないけれど、絶対、たくさん短大とかがあるだろうに。


その理由を知ったのは、その日の昼休みだった。