恋時雨~恋、ときどき、涙~

純日本人の顔に、ダークグリーン色のカラーコンタクトレンズ。


わたしの心臓が飛び跳ねた。


わたしは、とっさに彼女から目を反らした。


すると、肩を叩かれた。


何か、文句を言われるだろうか。


恐る恐る顔を上げると、彼女は屈託のない無邪気な顔をしていた。


「何やねん。さっきから。顔に、穴が開くわ」


やねん。


わたしは、唖然としてしまった。


この子、違う。


唇の動きに、違和感がある。


こっちの子じゃない。


わたしがぽかんとしていると、彼女はブランドバッグからルーズリーフとシャープペンシルを取り出した。


「せやったな。あんた、耳が聴こえんのやろ。書くわ」


彼女がシャープペンシルを握った手を止めて、逆にわたしがルーズリーフに書いた。


【大丈夫
 ゆっくり話してくれれば、くちびる読めるから】


ルーズリーフを見たあと、彼女はへーとわたしの顔を覗き込んできた。


「あんた、そんな特技があったんか。知らんかったわ」