恋時雨~恋、ときどき、涙~

「大丈夫。みんな、いい人だから。優しいから」


わたしは、にっこり微笑んでみせた。


確かに優しくて、みんな、いい人なのだと思う。


でも、正直、そんな事に興味はない。


どうでもいい。


この人たちがいい人だ、とか、優しい、だとか。


今のわたしには、どうでも良い事なのだ。


できる事なら、一刻も早くここから立ち去りたい。


家に帰りたい。


右手に握っていたスマホをスカートのポケットに押し込んで、わたしは静奈の肩を叩いた。


〈優しい人たちだね〉


わたしが手話をして微笑むと、静奈はほっとした様子を見せた。


その時、わたしの肩を誰かが叩いた。


振り向くと、そこにはライオン丸がいた。


プラスチックの透明なコップなみなみにコーラをついで、わたしの顔の前に突き出してきた。


異様な迫力に、わたしは小さく息を飲んだ。